技術ガイド

減速機におけるグリースの使い方

通信、スマートホーム、自動車、医療、セキュリティー、ロボットなどで使う小型ギヤードモーターについて、減速機用グリースの働きと選び方を解説します。

小型ギヤードモーターは通信、スマートホーム、自動車、医療、セキュリティー、ロボットなどで広く使われています。特に小型・超小型ギヤードモーターでは小モジュール歯車への関心が高まっており、減速機内のグリースも性能を支えます。主な役割は、①摩擦・摩耗の低減と焼き付き防止、②騒音低減、③衝撃・振動の吸収、④防さび・耐食、⑤異物の除去、⑥歯車かみ合い部の寿命向上などです。

グリースの選定は減速機の歯車材料と密接に関係します。正常な歯車伝動では、①適切な粘度、②高い負荷容量、③耐摩耗性、④酸化・熱酸化安定性、⑤耐乳化性、消泡性、防さび・耐食性、⑥良好な流動性、低凝固点、安全性、⑦混合摩擦条件で極圧(EP)添加剤が与える摩耗保護などを考慮します。

歯車材料には金属、粉末冶金材、プラスチック、MIM材などがあります。材質によって出力時のトルク、電流、温度、速度、騒音への要求が異なり、構造によっても必要なグリース特性が変わります。そのため、多様な特性のグリースが用意されています。

一般に、①減速機が小型で構造が密になるほど放熱面積が小さくなり、高い極圧性能と熱安定性が必要です。②複数の歯車対がかみ合う伝動では、消泡性と高い付着性が求められます。③かみ合い歯車の温度は運転トルクに応じて変わるため、起動時と通常運転時に良好な粘度温度特性を持ち、蒸発が少ないことが必要です。④軸受、オイルシール、その他の部材や異なる歯車材料に対し、良好な適合性と耐酸化性が求められます。

以下、グリースについて説明します。

1. グリースが歯車伝動へ及ぼす影響と対策

減速機におけるグリースの使い方 — 掲載図版

注:「√」は影響があることを示します。

上表のとおり、グリースは歯車伝動へ大きく影響します。適切なグリースは伝動寿命を延ばすだけでなく、減速機の騒音も減らします。どのグリースを使うかが特に重要です。

減速機におけるグリースの使い方 — 掲載図版

2. グリースの粘度の選び方

減速機の出力状態、歯車材料、グリース粘度は密接に関係します。出力トルクが大きい減速機は、寿命を確保し、前述の故障を遅らせるか防ぐため、一般に金属歯車を使います。高粘度グリースは付着性が大きく、金属の保護と防振に優れ、騒音も効果的に減らすため、この場合によく選ばれます。一方、低出力トルクではプラスチック歯車が一般的です。高粘度グリースを使うと粘性抵抗を克服するために電流やトルクが大幅に増え、運転を制限します。そのため、低トルクまたはプラスチック歯車の減速機には通常、低粘度グリースを選びます。

高速減速機は歯車の回転が速く、一般に始動電流や始動トルクを小さくする必要があるため、低粘度グリースが選ばれます。

通常は構造形式だけで粘度を選び分けるわけではありませんが、特殊な形式として遊星減速機を取り上げ、低速用グリースの選定例を参考として示します。

減速機におけるグリースの使い方 — 掲載図版

低速歯車のかみ合い周速度:

減速機におけるグリースの使い方 — 掲載図版

注:

d:低速側太陽歯車のピッチ円直径。

n:低速側太陽歯車のピッチ円回転速度。

i:低速側の歯車比。

3. グリース量の選び方

減速機内のグリース量は、かみ合い部の寿命や騒音などを左右します。多すぎるとコストが増え、適量は構造で異なります。遊星減速機では、通常、歯車かみ合い後に残る空間容積の50~60%が適切です。平行軸や食い違い軸の減速機は空間が多く、複数のかみ合い歯車対の騒音が比較的小さくなる量を選びます。ウォームギヤや面歯車の減速機は、歯溝容積の60%が目安です。

4. 色の選び方

グリース自体の色と粘度に一定の相関はありません。ただし高粘度のものは、赤などの濃い色であることが多くあります。

減速機には一般に、①精密機器用グリース、②食品グレードの防水・消音グリース、③歯車用グリース、④二硫化モリブデン配合の消音グリースなどが使われます。

二硫化モリブデン配合の消音グリースは黒色で、その他は一般に白、黄、赤などです。通常は、これらの色を自由に選べます。