駆動モーターの重要部品である整流子について、各形式の構造、構成部品、動作をPower Motorが解説します。
整流子は駆動モーターの主要部品であり、技術性能と製品品質がモーター全体の性能に直接影響します。回転時にはブラシが整流子表面で整流を行い、繰り返す摩擦によって熱が発生します。速度が高いほど表面温度が上がり、整流子の半径方向の変形や隣接片間の変形が大きくなって、火花等級が悪化し、モーター寿命が短くなります。樹脂製整流子には多くの構造があり、主にモーターの出力、電圧、速度、寸法で決まります。実務上、適切な構造の選択は、モーター性能の確保と生産性向上の重要な前提です。多くは半樹脂式整流子で、樹脂ケース、整流子片(銅バー)、マイカによる片間絶縁、金属ブッシュで構成されます。

図1:整流子の構造
1. 整流子片、2. 樹脂ケース、3. 金属ブッシュ、4. マイカ板
整流子片とコイル端部の接続構造によって、溝形とフック形の二つに分かれます。図2の溝形では、整流子片の盛上がり部分に溝を切り、そこにコイル端を埋めてスポット溶接(熱圧着)します。溶接時の高温でエナメル線の被膜が溶けて除去され、線端と整流子の溝壁との間に良好な電気接続が形成されます。図3のフック形では、ローターコイルを巻く際に線端を整流子片のフックへ掛け、スポット溶接時にフックを押し下げて、線端と整流子を良好に接続します。フック形はコイル線端の接続工程を自動化するために使われますが、主に整流子片数が少なく、出力の小さいモーター向けです。大出力モーターではコイル線が太く巻付けが難しいこと、片数が多いとフック幅が狭くなり、隣接する線端が短絡しやすいことが主な理由です。
| 図2:溝形整流子 | 図3:フック形整流子 |


モーターの回転速度が高く、周速度が30~60 m/sに達する場合は、構造上の対策で機械強度を高められます。図4は補強リングを備えたU字形あり溝構造です。補強リングには、継ぎ目なし鋼管から加工した鋼製リングや鋼線を溶接したものに絶縁材を被せたもの、あるいはガラス繊維強化プラスチックなどの有機絶縁材料を使えます。

図4:補強リング付きU字形あり溝構造
1. 整流子片、2. 補強リング、3. 樹脂ケース
整流子のケース(図5)は、ガラス繊維強化熱硬化性樹脂またはアスベスト樹脂で作られます。樹脂には高い耐熱性と機械強度が求められ、熱膨張係数は銅製整流子にできるだけ近い必要があります。フェノール樹脂のベークライト粉末がよく使われます。金属ブッシュは、整流子を軸へ圧入する際に樹脂が機械的応力を受けるのを防ぎます。小型整流子には寸法の制約で金属ブッシュがないことが一般的です。ブッシュには黄銅製やばね式などがあります。

片間絶縁にはマイカ板やマイカ粉末を使います。マイカは耐摩耗性が高いため、片間のマイカ板が整流子片より低くなるよう溝を設け、整流子片の表面から突出しないようにする必要があります。突出するとブラシと整流子片の接触が妨げられ、整流が悪化し、モーターが動作できなくなります。
整流子用銅バーの材料は、大きく無酸素銅・電気銅と、銀銅合金の二つに分けられます。前者は、小型家電用モーターや自動車のスターターモーターなど、主に低速用途に使われます。銀銅合金は主に掃除機や電動工具に使われます。これらは整流時の周速度が高く、火花が整流子表面を継続的に損耗させ、表面温度が急激に上昇します。銅に一定量の銀を加えると耐熱性が高まり、表面が変形しにくくなり、火花や整流子片の浮きなどの不具合を効果的に抑えられます。
